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2、三毛猫との出会い
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ひと月ほど経ち週三で通う塾にも大分慣れてきた。
六月になった今でも三毛猫の夢はよく見るがやはり何も起こりはしなかった。
梅雨の時期でじめじめとした天気が続く中、その日は珍しく晴れてさわやかな陽気だった。
学校から帰ってきた寅之助は塾の準備をして家を出た。途中工場の前にある自販機でジュースを買おうと思い自販機の前に立ち寄った。
ジュースを買った寅之助は何気なく工場の方に目をやった。入口の前で一匹の猫が日向ぼっこをしている。
三毛猫だった。思わず驚いた。夢で見た猫も三毛猫だったからだ。
その場所からしばらく動けなかった寅之助に気づいたのか三毛猫は寅之助に目をやってスッと起き上がりその場からいなくなってしまった。
なんとも不思議な感覚だった。
あの猫は夢で見た三毛猫だったのだろうか?
どうして今まで気付かなかったのだろうか?
疑問を抱え寅之助は塾に向かって歩き出した。どうせこの話をしたところで食いついてくるのは謙太だけだろう。
寅之助は小さなため息を吐いた。
その日の授業も何事もなく終わり、三毛猫のことなどとうに忘れていた帰り道、自販機のある工場の前にさしかかった。
工場付近は夜になると人もあまり通らないし街灯の光も弱く薄暗い。少し不気味な感じだ。
こんな時に怖いことを考えてしまうときりがない。
不確定な事なのにどんどん心拍数が上がってくる。
早くこの場所から立ち去ろうと歩くスピードを上げた時、なにやら不思議な音が聞こえてきた。
寅之助はヤバいと思った。怖くて倒れてしまいそうだった。
別に幽霊を信じているわけではないがこの手の話は苦手なのだ。
走ろう、そう思った時その音ははっきりと聞こえてきた。
「ニャ~オ」
ね、、、こ、、、
それは猫の鳴き声だった、、、。
首筋から嫌な汗が出てきたと同時に少し安心した、何より怖がっていた自分がひどく滑稽に思えた。
振り返ると猫がいた。あの三毛猫だった。
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