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3、大集会
3
こいつは野良猫なのか?疑問に思った。
毛並みは綺麗だしもいい。普段見かけることもないこの三毛猫は人馴れしていた。
何かを訴えかけているのだろうか、こちらをじっと見つめている。
しかしなにがなんだかさっぱり分からない。
猫の前にしゃがみこみ頭を撫でてやろうとした時、猫は後ろを向き歩き始めた。
?、?
寅之助は呆然と猫の後姿を眺めていたが、途中猫は振り返り、寅之助に向かって一声鳴いた。
ついて来いとでも言っているのであろうか?
さっきまで怖がっていた寅之助だが今は好奇心にかられている。
猫が自分になんの用なんだろう?
寅之助はついていくことに決めた。
猫は寅之助がついてきたのを確認するとまたゆっくりと歩き始めた。
工場の裏手に回り住宅街の細い路地に入っていく。
寅之助に気を使っているのだろうか、猫は人が通れそうもないような細い隙間などは避けて通っていく。
途中小さな交差点を右に左に曲がっていったが道に迷うことはないだろう。
近所でなにより小さいころによく通っていた道だったからだ。
冒険と称して何人かの仲間たちと探検したりした。
幼い頃の思い出だ。今はその仲間たちと遊ぶこともほとんどなくなってしまったのだが。
猫が足を止めた。目的地に着いたのだろうか。
広い空き地だった。見覚えがある。
昔は大きな家が建っていてそこに幼い頃よく遊んでいた友達が住んでいた。
冒険もその友達とやっていた。
裕福だったであろう。だが大人の事情というやつで友達は遠くへ引っ越してしまった。
今は取り壊されて何もない。
なんだかんだ近所にあったのに友達が引っ越してしまってから来るのは初めてだった。
猫がここにいったい何の用があるのだろうか?
なんで自分を連れてきたのだろうか。
人の気配もない薄暗い空き地の前で寅之助は考え込んでしまった。
何分くらい経っただろうか、しばらくすると空き地の奥の方に小さな影が一つ、また一つと表れ始めた。
暗くて見えずらかったがすぐにそれが何か分かった。
猫だ!
この辺りの野良猫がぽつぽつ空き地に集まりだした。
野良猫だけではない。毛並みの整った綺麗な猫もいる。初めて見る光景に寅之助は圧倒された。
噂や都市伝説だと思っていた猫の集会?が今目の前で起こりつつある。
多数の猫に寅之助は少し怖くなったが、好奇心のせいかその場から離れようとはしなかった。
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