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4、途中退場
4
ぞろぞろと集まった猫の数はざっと見ても二十匹はいた。
猫同士何か会話をしているのか、鳴き声があちこちから聞こえてきた。
自分を案内した三毛猫もその群れの中に入って周りの猫と何やら話しだしていた。
三毛猫の真意は分からない、ここまで案内してくれた理由はまったく分からないが今まで退屈な日常を過ごしてきた寅之助は興奮した。
おそらく普通に生きてきて見れる光景ではないだろう。
この後何が起きるのか、期待と緊張が寅之助の胸をよぎっていた。
その時である。ざわついていた猫たちの中で一匹の猫が大きな声で甲高く一声鳴いた。
それと同時にさっきまであちらこちらから聞こえていた猫の鳴き声がぴたりと止んだ。
そして猫たちはまるで決められていたかのように自分の位置に移動し始めた。
猫たちは大きな円を描くように並んで座った。まるでマスゲームのようだ。
この異様な光景を携帯のカメラで撮ろうと寅之助は構えたが周りは暗く上手く撮影できない。
寅之助は悔しがったがこれで終わりではなかった。
寅之助の横を一匹の黒猫が通り過ぎた。
その黒猫を見た瞬間ぞわっと全身鳥肌が立った。
人間の自分でも一目見て分かった。この黒猫がここら一帯のボスだと。
黒猫は大円の中心部に着くと、くつろぐかのように身を横にした。
これから猫の大集会が始まる。興奮も最高潮に高まった。
中央部にいる黒猫が低い声で鳴きだした。それに答えるかのように何匹かの猫が鳴いた。
この繰り返しを四、五回したところで。二匹の猫が大円から抜けてこちらに向かってきた。
その様子が明らかにおかしい。暗くて見えなかったが近づくにつれてはっきりした。
尻尾をピンと立て、全身の毛を逆立てている。
明らかに自分に向かって威嚇しているのだ。
今にも襲い掛かってきそうである。
なにがなんだかさっぱり分からなかったがさすがにこれはマズイ
この後どうなったかが気にはなったが猫の恐ろしい形相にその場から逃げだすことしかできなかった。
家に帰ってから気付いたのだが
あの猫の集会に自分がいたので帰らせるように黒猫が指示を出したのではないか?
何か人に知られてはまずい事でもあったのか?
じゃあなぜ三毛猫は自分を連れてきたんだろうか?
この日起きた出来事は分からないことだらけであったがその夜は興奮してなかなか寝付けなかった。
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