生霊返し

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 次の日。わたしは恋みくじを引きたいがために、恋愛成就で有名なパワースポットである神社へと出かけた。この神社で大吉を引くと、かなりの確率で意中の相手と両想いになれるらしい。人に聞いたわけではなく、雑誌やネットで仕入れた情報だった。  真っ赤な鳥居をくぐると、休日だけあって境内は参拝客でにぎわっていた。  神様に失礼のないように、手水舎で手を洗い、口をゆすぐ。お気に入りのバッグからハンカチを取り出し、手と口元を拭う。この行動も神様への配慮だ。  それから参道を歩いて本堂へ向かう。その近くまで行くと、ふと立ち止まって屋根に目を向けた。そこではスズメたちが仲良さげにじゃれ合っていた。  こんなわたしでも笑顔のひとつも見せたいところだが、彼との恋愛が成就しない限りは笑うことにすら抵抗があった。願いが叶うまでは笑わない。そのときがくるまで笑顔は決して見せないのだ。  ご神前にくると、賽銭箱の前で会釈をし、五円玉を納める。神社作法に習って、二礼二拍手一礼の作法で祈りを捧げる。ここまではブレない。これもわざわざ雑誌やネットで参拝作法を調べた情報なのだ。必ず彼との恋愛を成就させるために、わたしは願いを言い続けた。  1分、2分、3分……徐々にわたしの願う気持ちが強くなって行く。 「両想い、両想い、両想い……」  と、念仏でも唱えるように、周りの客を気にすることなく言い続けた。あぁ、わたしも早くあの人とこんな場所で永遠の愛を誓いたいものだ。さらに気持ちが強くなって行く。
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