生霊返し

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 そして、再び砂利の音を立てながら、大木の方へと向かう。その近くには横一列にいくつも並ぶ絵馬があった。この場に来た途端、なんだか胸騒ぎがした。いったい、どうしたというのだ。その原因を探るため、わたしは辺りを見まわした。  そんなときだった。突然、生温かい風が吹いた。まるでわたしに何かを訴えかけるように、絵馬はカタカタと音を立てる。わたしは誰かの視線を感じた。参拝客ではない。他の何者かだ。  その正体が絵馬と絵馬の間からこちらを覗き込んでいた。わたしは目を凝らしてよく見てみた。すると、その絵馬の影からひとりの男の目がこちらを見ていた。それはどうしようもなく恐怖に怯える、わたしを警戒した目だった。  しかし、わたしと目が合うとそれは一瞬にして消えた。  身の毛もよだつ心霊現象だったが、わたしはなにかその目に見覚えがあった。  目の下の辺りに泣きボクロが見えたからだ。
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