撮り去る

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撮り去る

私は非常に迷惑している。 待ち合わせ場所に向かうため、いつもの電車を使おうと地下鉄のホームに降りたら多くの人であふれていた。その半分くらいがカメラを持っている。 「アニメとのコラボで今日から外装が変わるんだって」 近くの人の話し声が聞こえる。アニメファンと鉄道ファンが集結しているわけだ。中には白線の内側まで体を寄せてカメラやスマホを構える人までいる。 そして怒号混じりのアナウンスの後にトンネルの奥から二つの光る目を持った電車が姿をあらわす。無数のシャッター音と舌打ちが閉鎖された空間に響く。 不意に私は斜め後ろから視線を感じて振り向いた。そこにはiPhoneを構えて写真を何枚も撮っている髪の長い女の人がいた。 しかし彼女はそのカメラを電車ではなく明らかに私に向けている。 「なんですか?」 私は戸惑いつつも彼女に尋ねる。 「ごめんなさい」 彼女はスマホを下げて何かを含んだような笑顔を見せる。その目は血のように赤い。 そして私に向かって言う。 「私、もうすぐ死んでしまう人を撮るのが趣味なんです」
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