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言葉に詰まったような様子を見せるブレイドに、彼女はきょとんと目を瞬かせた。
だがすぐにブレイドは、形のいい唇の両端を吊り上げて、何事もなかったかのように笑う。
「復活した魔王に、魔界と人間界を繋げなくさせた勇者。俺可愛い子に嘘つかないよ」
爽やかに微笑みながらブレイドは、彼女の金髪から指を離した。代わりに、彼女の顎に指先を掛ける。
そのまま顔を近付ければ、彼女は拒否する様子も見せず、ゆっくりと目を閉じた。
そんな彼女を見て、ブレイドも瞼を下ろす。闇に閉ざされる視界。目を閉じる直前に見えたのは、風に靡く金髪。
綺麗な、人混みに紛れても目立つ金髪。だからこそブレイドも、彼女に声を掛けて、路地裏まで誘導したのだ。
(……ああ、でも、あいつの髪の方が綺麗だったかも……)
一瞬そんなことを考えたブレイドは、自分にぎょっとする。こんなときにまで『あいつ』を思い出す自分に驚くしかない。
「……」
緩く首を左右に振り、ブレイドは改めて、目を閉じて自分を待つ彼女に、唇を近付ける。
鼻先が触れ合うほど、お互いの距離が近くなる。どことなく、お互いの吐息が絡み合うような感覚。そのまま吸い寄せられるように、唇に唇を重ね――。
「おい」
「ッ!」
唇を重ねる直前。唐突に背後から、不機嫌も露わな声が聞こえてきて、ビクッとブレイドは大袈裟なほど肩を跳ねさせた。
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