act.1 ブレイドとリデル

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 言葉に詰まったような様子を見せるブレイドに、彼女はきょとんと目を瞬かせた。  だがすぐにブレイドは、形のいい唇の両端を吊り上げて、何事もなかったかのように笑う。 「復活した魔王に、魔界と人間界を繋げなくさせた勇者。俺可愛い子に嘘つかないよ」  爽やかに微笑みながらブレイドは、彼女の金髪から指を離した。代わりに、彼女の顎に指先を掛ける。  そのまま顔を近付ければ、彼女は拒否する様子も見せず、ゆっくりと目を閉じた。  そんな彼女を見て、ブレイドも瞼を下ろす。闇に閉ざされる視界。目を閉じる直前に見えたのは、風に靡く金髪。  綺麗な、人混みに紛れても目立つ金髪。だからこそブレイドも、彼女に声を掛けて、路地裏まで誘導したのだ。 (……ああ、でも、あいつの髪の方が綺麗だったかも……)  一瞬そんなことを考えたブレイドは、自分にぎょっとする。こんなときにまで『あいつ』を思い出す自分に驚くしかない。 「……」  緩く首を左右に振り、ブレイドは改めて、目を閉じて自分を待つ彼女に、唇を近付ける。  鼻先が触れ合うほど、お互いの距離が近くなる。どことなく、お互いの吐息が絡み合うような感覚。そのまま吸い寄せられるように、唇に唇を重ね――。 「おい」 「ッ!」  唇を重ねる直前。唐突に背後から、不機嫌も露わな声が聞こえてきて、ビクッとブレイドは大袈裟なほど肩を跳ねさせた。
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