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それは見えないながらも、リデルを中心に、まるで竜巻のように発生しているのが分かる。彼の体から溢れ出した禍々しい力が、周囲の空気を汚染していく。
「別に今すぐ、すべてを破壊してもいいんだぞ」
(まず……ッ!)
「何、この子」
ブレイドの背後で、この不穏に気付いていない彼女が、訝し気に呟くのが聞こえた。
「リ、リデル、誤解だ! お、俺……そう! この子に無理やり連れ込まれて!」
「はあ!? あんた何言ってんの!? あんたが声掛けてきたんじゃない!」
「俺を信じてくれ! 頼む!」
「……」
「俺にはお前だけだよ。お前だってそうだろ?」
「……それは」
戸惑ったように、リデルの瞳が揺れる。それと同時に、少しずつリデルから発せられる嫌な気配が小さくなっていって、ブレイドは内心安堵した。
(よし、この調子でこのまま……!)
「な? 俺がお前のこと裏切るわけないだろ。よし、じゃあ一緒に帰……」
「サイッテー!」
笑顔を取り繕い、必死に言葉を紡いでいたブレイドは、背後から衝撃を受けて前につんのめり、そのまま無様に地面に倒れ込んだ。
「ホモが声なんか掛けてこないでよね! 最悪! 最低!」
受け身こそとったものの、体を地面に打ち付けてブレイドは痛みに呻く。
そんなブレイドへ、彼を足蹴にした張本人である彼女は、金切り声でそう叫ぶと、走ってどこかへ行ってしまった。
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