act.1 ブレイドとリデル

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(あー……せっかく見つけた上玉が……)  遠くなる背中を視界の端に捉えながら、ブレイドは情けなくて泣きたい気分だった。  格好よく決めて、近くの宿でしけこむつもりだったのに。久々の一人での外出で、やっと巡ってきたチャンスだったのに。  まさか男との痴話喧嘩を見られて、足蹴にされ、あんな風に言われてしまうなんて。  情けなくて、ブレイドは泣きたい気分だった。 「おい」  そんなブレイドに陰がかかる。  ブレイドが顔を上げると、リデルがすぐ傍に立って、倒れたまま起き上がろうとしないブレイドを、赤い瞳で見下ろしていた。 「帰るぞ。ここは人間臭くて気にくわない」  呟き、リデルは嫌そうに顔を歪める。  腹の立つことに、美少年というのは、どんな顔をしても似合う。そんなことを考えながら、気乗りしないながらも「……ああ」とブレイドは頷いた。  緩慢とした動作で起き上がり、砂のついた服や茶髪を軽く手で払う。 「……ん、じゃあ行こう」  ブレイドはそう言って、路地裏から出ようと歩き出す。が、すぐに、リデルが突っ立ったままで動かず、自分について来ようとしないことに気が付いて足を止めた。 「リデル? 帰るんだろ?」 「……こっちの方が早い」 「え?」  ブレイドが聞き返すより、早く。  リデルは器用に自分の背中へ手を伸ばすと、服のボタンを外し始めた。  リデルの服は、背中の側にボタンがついている仕様になっている。着辛いし脱ぎにくい、そんな奇妙なデザインだが、それも仕方のないことなのだ。  何故なら――。
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