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「で、どうだった? 読んだ?」周平はデジャブのように、昨日と全く同じ体勢で振り向いて僕の顔を覗き込んでいた。
「読んだよ」
「当たってた?」
「なんとも言えないね。当たってるようで当たってない。そもそも10代の人間の過去なんて、どれも似たようなもんだろ? もっと大人になってからじゃないとツマラナイよ、あれ」
「まあ、確かにね。タレントでもなければ、大抵の10代は同じような人生を送ってるもんな」
「そうだよ。俺なんて体育祭のサッカーでMVPに選ばれたのが最大の山場だぞ? 笑っちゃったよ」
「あの時の君は輝いていたよ」周平はわざとらしく目を輝かせていた。
「うるせーよ・・・・・・でもさ、ちゃんと小説になっているんだな。ヒロインとかも登場するし」
「ヒロイン? 彼女なんていたこと無いのに? ヒロイン?」
「・・・・・・ああ。俺のことを陰ながら見守っている女子が随所に登場するんだ。MKというイニシャルで」
「MK・・・・・・このクラスなら、小宮ももかと木下町子の二人しかいないな。すげー両極端な二人だな」周平はクスクス笑っていた。
「しかもさ、放課後の俺の後ろをストーキングしてたりするんだよ。ヤバくね?」
「すっげー読みたい。きっとそのMKがスマホとかにお前の名前入りで日記とか書いてんだろ。その情報が流出しているんだよ」
「さらっと恐ろしいこと言うなよ」
「もうそういう時代なんだって。今さら個人情報の流出を防ごうなんて思っても無駄だ。折り合いつけていくしかないんだよ」
小宮ももかは誰もが認めるクラスのアイドル的存在だった。ルックスもスタイルも良く、成績は上位だ。アイドルグループのオーディションを受けているという噂まであった。
そんな小宮に告白できる勇気を持った肉食系男子はクラスには存在しない。あのレベルならどうせ大学生のイケメン彼氏がいるに違いないと、誰もが勝手に予想し、勝手に白旗を挙げてしまうのだった。
小宮の前の席に座っている木下は、まるで逆の存在だった。分厚い眼鏡をし、休み時間はいつも1人で少女漫画を読んでいる。昼ごはんも1人。陰キャラの代表格だ。
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