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2人の男女は職員室の中に入ってくると、電気も点けずに会話をしていた。
聞き覚えのある声だった。男は英語の教師の泉で、女は国語の鈴木だ。
2人とも既婚者のはずなのに体を寄せ合い、時々「チュ」という音を唇から発していた。その都度、僕と周平は顔を見合わせた。
周平のスマホから通知音が鳴り響いたのは、3度目の「チュ」の後だった。
「なんだ? 誰か携帯忘れたのか?」泉は鈴木の腰に回していた腕を解くと、僕たちのいる場所に急接近してきた。万事休すだ。
「すみません」と言いながら、突如周平は立ち上がった。
泉は目を見開きオーバーリアクションで仰け反っていた。鈴木は乱れた着衣を慌てて元に戻していた。僕は机の下で置き物のように固まり、成り行きをただ見守るしかなかった。
「こ、こんなところで、なにをしている!」泉は声を荒げた。
「ちょっと、探しものがあって・・・・・・」
「職員室で?」
「はい・・・・・・正直に打ち明けます。生徒の名簿が見たかったんです。見せていただけませんか?」
「何を言ってるのか、分かってるのか?」泉の声は震えていた。
「すみません。無理を承知でお願いしているんです」周平の右手にはスマホが握られていた。
「できるわけないだろ!」
「交換条件でいきましょうよ」
「交換条件?」
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