アガスティア

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 その後、僕たち2人は何も喋らず、小宮ももかと木下町子の過去小説を読み耽った。自分の小説を読むのとは違い、他人の私生活を窓から覗き込むような緊張感があった。  途中何度かドリンクバーを補充しに行き、トイレにも行ったが、互いに会話はなく、ほぼ同じくらいの時間で僕たちは小説を読み終えていた。客の大半は入れ替わり、店員は邪魔くさそうに僕たちを陰から睨みつけていた。 「意外だったな・・・・・・」周平は窓の外を見つめながらポツリと言った。 「なにが、人は見た目通りだよ」僕は氷が溶けて薄くなったドリンクを放心状態で見つめていた。 「まさか、真面目キャラの木下がな・・・・・・」 「あくまでも小説だ」僕は現実を受け入れられずにいた。 「木下がさ、学校が終わったらすぐに帰るのは、そういうことだったんだ・・・・・・それにしても小宮はウケるな。完全に高校デビューだもんな。中学時代の冴えないこと。小説の中にYSというイニシャルの片思いの男が出てきたけど、あれはお前だろ」周平はズルそうな笑顔で僕を見ていた。 「・・・・・・他にもYSはいるだろ」 「サッカーやってたYSは、お前くらいだ。告ってみ。絶対成功するから」 「無茶言うなって・・・・・・情報が少なすぎるだろ」僕は笑顔が溢れそうになるのを必死に堪えていた。
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