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告白できないまま、1週間が過ぎた。
僕と小宮が両想いであるのなら、もう少し頻繁に互いの目が合ってもいいものだが、それがほとんどない。僕のことを意図的に無視しているかのように素っ気ないのである。
僕が勝手に意識しているだけなのだろう。小宮は今まで通り生活しているだけなのだ。所詮は小説である。盛り上げるために脚色された部分を読んで、勝手に舞い上がっていただけ。下手に告白なんてしようものなら「は?」という顔をされて奈落の底に突き落とされるのがオチだ。
「恋に臆病だね、悠介くん」英語の授業の際に隣の席に座った周平は、ヤンチャな笑顔で話しかけてきた。周介に弱みを握られている英語教師の泉は、チラチラと周介の様子を伺っているが、私語を注意することはなかった。
「うるせーよ」僕はムキになっていた。
「そろそろ結論を出しておいたほうがいいと思うよ。10代なんてあっという間に終わるぞ」
「お前はおっさんかよ」
「10代をどう過ごしたかによって、その後の人生は大きく変わると思うけどね。脳細胞や身体能力は今がピークだよ。あとは下る一方だ。恋愛も一緒」
「お前本当は留年してるだろ? 20才くらいに感じるぞ」
「いいから黙って聞きなさい。大人の恋なんて金と体が全てだろ。ピュアな恋というのは今しかできないことなんだよ」
「勉強も一緒だろ。今しかできないことだ。一生懸命勉強して、有名大学に入って、楽し
いキャンパスライフを送っても、全然手遅れじゃないだろ」
「無理だね。10代で恋愛のスキルを身に着けなかったら、大人になっても不器用なままだ。英語の勉強と一緒だよ。若いうちにやっておいたほうが習得しやすい」
「だったら黙って授業を聞けよ」僕は呆れながら前を向き直した。
「なんだよ・・・・・・やたらツンツンしてるけど。せっかくアガスティアを読んだのにそれじゃあ意味ないだろ」
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