アガスティア

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 アガスティアの新機能が発表されると、もちろんネットは大騒ぎになった。  しかし今回は微妙に風向きが変わっているように僕は感じていた。好意的な意見が散見できるのだ。  こんな書き込みがあった。 「僕は以前体調を崩し、病院で診察を受けました。原因は不明で、医者と話をしていた付き添いの家族に訊いても、何も答えてはくれませんでした。アガスティアの未来小説を読んで愕然としました。半年後に僕が死ぬことが書かれていたんです。どうやら僕は末期の癌で、家族はそのことを僕に隠していたみたいです。病院の情報はダダ漏れですね」  こんなのもある。 「私はシングルマザーです。女手一つで子供を育ててきました。毎日朝から晩まで働き、同じことの繰り返しです。唯一の変化は、子供が成長することくらい。それこそが私の生きがいになっていました。自分の未来は単調で、同じ曲を何度もリピートして聴いているみたいなものでした。アガスティアの未来小説を読むまでは・・・・・・。どうやら今年の夏頃にKHというイニシャルの男性が私に告白するみたいです。思い当たる人は一人います。何度か食事に誘ってもらったことのある上司の男性です。私は今から胸がワクワクしています。みなさんも試しに未来小説を読んでみたらいいと思いますよ」  そして次のようなものを発見した。 「さっき未来小説を読んだのですが、どうやら僕の会社は年内に倒産するみたいです・・・・・・明日から転職活動を始めたいと思います。ちなみに僕の会社は○○です」  僕はその会社名を見て腰を抜かしそうになっていた。  父が働いている会社だったからだ。
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