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いよいよだ。自分の1年後を知る時が来た。緊張の瞬間である。まさか死んでいるなんてことはないだろう。体調は万全だ。
コンビニで買った十万円分のカードをスマホに登録し、迷うことなくアガスティアに課金した。使用上の注意を全く読まず「同意」にチェックを入れてから、個人情報を慣れた手つきで打ち込んでいく。
「YSの1年後の未来」
飾り気のないタイトルが画面に映し出された。
「それで、内容はどうだった?」
体育の時間。周平と僕はサッカーボールを互いにパスをする練習していた。周平は目を輝かせながら質問をパスしてきた。
「大学は・・・・・・合格してたよ」僕は強めにボールを蹴った。
「おいおい、嬉しい気持ちは分かるけど、オチは最後に言うもんだろ。そこまでのプロセスの中に、学校生活の輝きみたいなもんはないの? 学校を卒業する前に男として卒業しておく事があるだろ」
「何もない」
「小宮とは何も進展しないまま卒業か」
「ああ」
「お前がモタモタしてるから、他に好きな男ができたんだろ。この時期の高校生は恋人いない歴イコール年齢という不名誉な記録との戦いだからな。たとえ1ヶ月でもいいから恋人がいたという記録を残しておきたいんだよ。夏休みがそのピークだ」
「くだらない」僕は吐き捨てた。
「気持ちは分かるよ。でもそれが現実だ。顔を背けたら駄目だ」
「俺はいいよ。このまま無難に卒業して大学に入れれば、それでいい」
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