アガスティア

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 学校から帰宅した僕は、玄関に姉の靴があることを確認すると、かわいらしいピンクのぬいぐるみのぶら下がったドアの前に直行した。 「ねーちゃん、開けていい?」僕はドアを3回ノックした。 「LINEで済ませられる内容ならLINEで伝えて」 「本気で言ってる?」僕はドアを開けて、中にズカズカと入った。 「何の用?」姉はベッドで横になったまま不機嫌な顔で僕を睨みつけていた。 「家族の生年月日を知りたいんだけど、覚えてる?」 「あんたさ、アガスティア覗こうと思ってるでしょ」姉は間髪入れずに切り返してきた。 「もう知ってんだ・・・・・・」 「自分の過去を楽しむ分にはいいけど、絶対にそれだけでは終わらないから止めときなって。親の過去なんて知るもんじゃないよ」 「そんなの興味ねーし。姉ちゃんは自分の読んだ?」 「うん・・・・・・」 「どうだった?」 「まあこんな感じだったかなって感じ。一般人の人生なんて小説化しても読むに値しないよ。たとえ無料でもね」 「じゃあ、いいじゃん。早く教えてよ」 「いいけどさ、親の過去を覗くのだけは止めたほうがいいよ」 「分かってるって」
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