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ロイの真剣なキス……まだ感触が残っていて、私の顔は赤くなったまま、なかなか元に戻らなかった。
「ふふふ、佐倉から聞いたよ~。 あんた、ロイと付き合い始めたんだって?
「あ、ふふ。そうなんだ」
「ああいう、やかましいのが好きだったとはねえ」
「別にそういうことじゃなくて……ロイだったから付き合ったのよ」
「あーあ、ノロケられちゃった。んで、彼は優しいの?」
「うん、今日も帰りに、待ち合わせしてるの。って言っても、夕飯の買出しに付き合ってくれるだけなんだけどね。荷物持ってくれるっていうから」
「へー、アイツって意外とマメだったんだ~」
「……ふう、結構買ったわね。 4人分だから仕方ないかな。……重くない?」
「おうっ、これくらいなんてことねーよ」
力が強いロイは、こんな時にはとっても頼りになる。他の人の3倍は持ってくれるものね。 でも、さすがにちょっと持たせすぎちゃったかな?
「あ、帰りに公園でアイスクリームでも食べていこうか?」
「いいね! やりー」
「あー、こっちの食べ物って、何食っても美味いんだよな。魔界にはない味だぜ」
魔界の食べ物ってどんなのかな。
絵本の中に出てきた魔女のご飯っていえば、蛙とかイモリの黒焼きとか……。
うーん、私は魔界には住めそうにないなあ。
「……そういえば、そもそも、どうして魔界を飛び出してきたの?」
私は前からの疑問をぶつけた。
そんなに唐突な質問のつもりはなかったのに、ロイは大きな目をさらに真ん丸くして、私をじっと凝視した。
「ろ、ロイ?」
「あ、ご、ごめん。いや、そんなこと聞かれると思ってなかったから。うーん、そうだなあ」
なんだか言い訳っぽく聞こえる……。
ロイはふっと遠くを見て考え始め、すぐににこっと笑って私の方を見た。
「退屈だったから、かな。こっちみたいに遊ぶ場所がいっぱいあるわけじゃねーし、美味い物だってそうないしさ……。それから……」
どうしちゃったんだろ? 言葉の1つ1つに、いつもの歯切れの良さがない。
「……理由はそんなもんかな」
そう言ってるけど、なんだか他に理由があるのに、隠してるみたに見える。
「人間界は面白い?」
「おう! なんてったって、お前がいるからな、面白くないわけねーよ」
「ほんとかなあ~? 調子のいいこと言っちゃって」
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