1人が本棚に入れています
本棚に追加
公園に着くと、ロイが噴水で無邪気に水遊びしているのがすぐ目に付いた。……確かに、あれは目立つわね。
ロイも私に気づいて、手をブンブンと振っている。
私はゆっくりと噴水のほうに近づいていった。
「かなた! これ面白いなあ」
ロイは大きく手を広げて、噴水のしぶきをキラキラと浴び、子供みたいな笑顔を振りまいている。
やっぱり狼も犬みたいに水浴びが好きなのかな?
魔界には噴水みたいなものは無かったかな?
「もう、そんなに近づいたらずぶ濡れになっちゃうわよ?」
「こんなに綺麗で気持ちいいものがあるなんて、やっぱりこっちはいいなぁ」
「魔界には噴水は無かったの?」
「う~ん、こういう綺麗なのは……無かった、か、なぁ」
ロイが先日のような歯切れの悪い受け答えをする。 なんとなく魔界の話をされるのを嫌っているように見える。
聞いたらマズイのかな……でも、やっぱりロイのこともっと知りたい。
私はちょっと考えてから、噴水の縁に腰掛けてロイを見上げた。
「……ねぇ、ロイ? 魔界のこと聞かれるの嫌?」
ロイの動きが止まった。
逆光で表情は良く見えないけど、なんとなく困っているように感じる。
やっぱり聞かないほうが良かったのかな……。
そう思った瞬間、ロイは噴水の音にかき消されてしまうような、か細い声で呟いた。
「……俺は、ダメな奴なんだよ」
ロイは私の隣にドカッと腰をかけた。
「お前に嫌われたらイヤだから、あんあまり言いたくなかったんだけどさ……やっぱり、付き合ってるんだから隠し事はダメだよな……」
いつもの笑顔がどこかにいってしまって、ロイは真面目な顔をして地面を見つめている。
あまりの表情の変化に私はやっぱり聞かないほうが良かったかもと少し後悔した。 でも、ダメな奴ってどういうことなんだろう……。
「ごめん、ロイ。言いたくないことだったら私、別に……」
そこまで言いかけると、ロイが大きく首を振りながら喋りだした。
「いや、いいんだ。うん、おまえには俺の全部知っててもらいたいから。……俺は、魔物としダメな奴なんだ」
ロイはため息をついてから、ゆっくりと続ける。
「本当はさ、俺くらいの年になったら、普通は成獣化していいんだ」
「成獣化?」
最初のコメントを投稿しよう!