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「今の俺って、人型と狼の混同みたいな体だろう? 成獣化すれば、自分の意志で獣の姿になったり、今の体に戻ったりできる」
「そうなの……?」
そういえば、ロイの容姿って、私のイメージする狼男とはかけ離れているわよね。
私が考えるのはもっとけむくじゃらで……どちらかと言えば、狼が二本足で立っているようなイメージだもの。
「そ。それにもっと身体能力が上がるしな。でも、俺はいつまで経っても成獣化できないでいる」
ふさっ。尻尾が揺れる。
「一族の皆は口ではそんなこと気にするほどのことじゃないって言うんだけど、陰では絶対俺のこと笑ってるんだ」
「……ロイ」
ロイにそんなコンプレックスがあったなんて……。
ロイは泣き出しそうな声で吐き出していく。
「俺一人だけこんな中途半端で、皆といても全然馴染めないんだ」
今まで見たこともない、淋しそうな顔。
「ユーゴやフロリアとつるんでたのもさ、勿論、あいつらといると楽しいのもあるけど、他の種族といた方が楽しいっつーかさ」
それから、自嘲気味に笑った。
「へへ、あいつらも、魔界では悪い意味で結構な有名人なんだぜ? つまり、俺たちはダメダメトリオってわけだ」
それからまたふっと、地面に視線を落とした。
「居場所が無かったんだ、俺。魔物なのに魔界に居場所がないなんて、変な話だけどさ……」
「……」
「だから……結局俺、逃げ出して来たんだ。人間界に逃げてきたんだよ、情けないヤツだろ?」
「でも、だから会えたんだよね」
そう言うと、ロイはしばらくきょとんとした顔のまま、私の顔を見つめていた。
それから今まで弱音を払拭するように大きく頭を振りかぶって、嬉しそうな笑顔になった。
「おうっ、そのとおりだな!」
さっきまで泣き出しそうだったのが嘘のような笑顔に、私はちょっとホッした。
言いたくないことを無理やり聞き出したんじゃないかと不安だったから。 でもロイはちゃんと教えてくれた。 大事なことを伝えてくれただけでも私はすごく嬉しかった。
「ねえ、ロイ? なんか食べて帰ろうか?」
「え、いいのか?」
「うん、行こう?」
「おう!」
「うーん、今日も授業終わり~!」
「ちょっと、いいかな」
「どうしたの、そんな真剣な顔して」
「話があるんだよね」
「美琴ちゃんまで」
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