第1章

14/40
前へ
/40ページ
次へ
 「昨日、ロイと公園にいたよね」  「うん……?」  やだなあ、デートしていたところを見られちゃったのかな?  「誤解しなで聞いて欲しいんだけど」  美琴ちゃんまで深刻な顔してるから、私は自然と構えてしまった。  「ごめんね、昨日……君たちの会話が聞こえてしまったんだ」  「……!」  「あんたたちは気が付いていなかったけど、あたしたち、すぐ後ろにいたんだよ」  「つ、つけてたの!?」  「だから誤解しないでって。あたしたちの方が先に噴水の側にいたんだからね」  そういえば……噴水の流れでよく見えなかったけれど、反対側に誰かいたっけ……。  「あんたには悪いけど、ロイのこと見損なったよ」  「ええ!?」  「あんな事情を聞かされちゃったら、ここに残りたい理由に君を使ってるようにしか見えないよ」  「そんなこと……!」  「普段から調子がいい奴だしね、あたしも心配」  「美琴ちゃんまで……」  どうして? どうして2人とも……そんな悲しいことを言うの?  「意地悪で言っているんじゃないんだ、君が傷つくようなことになったら、僕は……」  言いかけて、智哉くんは言葉を飲んだ。  「……大丈夫、だもん……」  2人とも酷いじゃない。  ……心配してくれているのはわかっているけれど、ロイはそんな人じゃない。  私のこと、本当に好きでいてくれている……んだよね?  大丈夫だよね……?  「お~い、かなた~」  「もう! ノックしてって言ってるでしょ!」  ロイはその声を無視して床に平然と座り込み、マイペースに続ける。  「なあなあ、これなんだ?」  ロイが手にしているチラシをひらひらとさせる。  それは結婚式場の広告で、綺麗な和装の新郎新婦の写真が大きく載っていた。  「え? ああ、これは結婚式場の写真よ」  「へぇ~、こっちじゃこういうの着るんだ」  「日本はね、和服でも結婚式を挙げるのよ」  「……俺でも似合うかな?」  ロイが照れくさそうに笑う。  「あは、そうね……」  笑いかけようとすると、ロイの表情が急に曇った。  「でも、こんな耳とか尻尾とか生えてる俺じゃ無理か……」  「……もう、なに言ってるの?」  「そうだな、ますは結婚よりもちゃんと、ソーゴーリカイをきめてだな!」  「互角理解でしょ。十分わかってるわよ」  ロイが飛び掛かってくるのを、枕で制する。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加