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時間が空いたので、ロイの部屋にお茶とお菓子を持っていった。
たまんは部屋でのんびりもいいな、なんて話していると、ロイがおばあちゃんとの思いでを語り始めた。
「やっぱり、こうやってハルちゃんがお茶淹れてくれたことがあって。そん時は俺まだお茶とかよくわかんなくて淹れてるそばから邪魔してさ」
「へぇ」
「で、熱いのをひっくりかえしちゃったりしてさ、あはは」
「ロイらしいね」
「だろ? でもハルちゃんはさぁ、俺がそうやってバカやってもさ、火傷しなかった? とか言って頭撫でてくれたんだ」
ロイがその感触やおばあちゃんの表情を思い出すように、目を瞑って柔らかい笑顔を浮かべる。
……ロイはおばあちゃんの思い出をとても幸せそうに話す。
それを見ていると、なんだか少し、心に冷たいものを流し込まれたような気分になる。
「ふーん」
「でも調子に乗ると、やっぱりハルちゃんでも怒ったりするんだよねな、たしなめるって感じで優しくだけど」
「……そう」
「でも、ほわほわってなんか不思議なあったかい気分になるんだよな、ハルちゃんに怒られても」
「……」
「でも、お前に怒られてもちょっとそんな感じになるな、やっぱ似てるのかな?」
「似てないわよ!」
――ロイのバカ。
そんな、おばあちゃんのほうがいいみたいな話を2人っきりのときにしなくてもいいのに。
これじゃあ、ロイは私がおばあちゃんの孫だから、好きみたいじゃない。
ううん、実際そうなんだよね……。
みんな、私のどこかに、おばあちゃんの面影を追い求めているんだもの。
「なんだよ、どうしたんだよ?」
「……そういうのあんまり聞きたくない」
「え? 何言ってんだよ」
「だって……。みんな本当はおばあちゃんのことが好きで、私はおばあちゃんじゃないし、おばあちゃんみたいにもなれないし」
「う~ん、そりゃハルちゃんのほうが女の子らしくて優しかったけど……」
「……」
まだ、そういうこと言うんだ……ガックリとした瞬間、ロイがひょいと私の側に張り付いた。
顔を寄せて、しっかりと私を見つめたかと思うとニッコリと笑う。
「お前のほうが一緒に居てすっげー楽しいし、明るくて優しくて大好きだぞ!」
「……え、あ」
余りにもあっけらかんと笑顔で答えるロイに呆然としてしまった。
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