第1章

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 「いいかげんにしなさーーーい!!」  ゴチッ  「いってー! いきなり立ち上がるなよっ!」  「調子に乗るからいけないんでしょ!」  「なんだよー、けちっ!!」  ご褒美なんて思った私が甘かったわね。  ちょっと隙をみせるとこれなんだから!  「おい、いるか?」  「もう、入ってくるときはノックしてって言ってるでしょう?」  「あ、……ごめん」  そう言うと同時にベッドの隅へ、ぺたりと座り込んだ。  なんだか、妙に素直なロイ。  ちょっと元気も無いみだい、耳もぺったりと寝ちゃっている。……どうしちゃんだんだろう?  「どうしたの?」  そういいながら私も机からベッドに移動して、ロイの横に座る。  「……うん、なんだかわかんないんだけど、調子悪いんだ」  「え、大丈夫? どうしよう、熱あるのかな。えーと、体温計、取ってこようか?」  慌てる私をロイは手で制して、張りの無い弱々しい声を出す。  「いや、いいから。ちょっとだけ肩貸してくれれば。……ダメか?」  「そんな、勿論いいわよ。本当に大丈夫?」  「うん、ありがとう」  ロイが私の肩にしおらしくもたれかかる。  肩から伝わる体温はそんなに高くないみたい……。  でも、ぐったりとするロイを見ていると心配はつのる。私はロイの頭をゆっくりと優しく撫でて話しかけた。  「熱はそんなにないみたいだね……」  「……うん。でも、ちょっとだるいんだ」  「ちゃんと寝たほうがいいんじゃないの?」  ロイがその私の台詞を否定するように、そっと膝に手を置いてきた。  「……こうしてるほうがよくなる気がする。お前の側にいると安心するし」  「……ロイ」  「かなたは俺の元気の源だから、一人で寝るよりずっと元気になるんだ」  元気の無い声でそんなことを言われて、思わず顔が赤くなる。  男の子にこうやって頼られて甘えられるのも、結構嬉しいものなのね。  「ありがと。でも早く元気になるには寝たほうがいいかも」  「……うん、でももうちょっと」  ロイの手が甘えるように、膝を撫でる。  なんだか、こんなに甘えた姿を見せられると魔界のウルフなんてのが嘘みたい。それこそ弱ったかわいい子犬しかみえないものね。  つい、優しく微笑んで頭を撫でてあげていると、ロイが上半身をもっと密着させてくる。  「……好き」
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