1人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
静かに甘い声を上げたと思ったら、ロイの手がそっと頬を撫でた。
「……ん!?」
そのまま目を閉じて唇を寄せてくるロイ。
……ちょ、ちょっとまって? あれ?
ロイの耳はさっきと違ってピンと立っている。
これはもしかして……??
「おれ、きっとヤバい病気なんだ……ああ、眠り姫も起きるって言うアレ……してもらったら元気でるかも……」
甘えた声を出しながら、口をもぐもぐさせる。
「ちょっとまって、ロイ!?」
「な……、いいだろ?」
――これは、やっぱり仮病!?
ちょっと心配した私がバカだったわ!
私はロイの手を振り解いた。
「も~! ロイのバカ! 仮病だったのね!」
――ゴン!
「……痛ててててててて! ちぇ、バレちゃったら仕方ないな」
ロイが頭を抱えてうずくまる。
「もう、本当に、すっごくすっごく心配したのに! 信じられない!」
「そんなに怒らなくてもいいだろ……。でもゴメン。やっぱりこう言うのは男からするべきだよな。……ん~~っ」
悪びれもせず、また飛びついてこようとするロイをひらりと避けて立ち上がった。
「いいっていうわけないでしょっ!!!! バカ、出て行って!!」
「ちぇ~、失敗したなぁ。わかったよー、また後でお願いしにくるぜ!」
ロイはまったく懲りない様子で笑顔を浮かべながら、部屋を出て行った。
その背中に私はため息をつく。
……でも、あんな風に甘えたくなるときがロイにもあるのね。
いっつも直球で、キスさせろ! って言ってたのに、どこであんなワザを覚えてきたのかな。
……甘えん坊のロイもちょっと可愛かったけどね。
私はロイの甘えた仕草を思い出して、つい、一人で微笑んでしまった。
お弁当は夕飯の残り物と卵焼きを焼いて……ごはんにはゆかりをかけようかな。
あ、美琴ちゃんに借りた雑誌を返さないと。あの雑誌に載ってたスカート可愛かったなあ。
そろそろ欲しかったCDが発売される頃よね。 学校帰りにお店に寄ろうかな。
部屋で一人、そんなとりとめのないことを考えていると、ドアがノックされた。
「おーい、いいか」
「ロイ? 何か用?」
「フロリアとユーゴのヤツ、俺を置いてどこかに出かけやがった! つまらねーよ」
仕方ないなあ。
「ちょっとだけだからね」
「わかってるよ。ったく、信用ねーな」
最初のコメントを投稿しよう!