第1章

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 静かに甘い声を上げたと思ったら、ロイの手がそっと頬を撫でた。  「……ん!?」  そのまま目を閉じて唇を寄せてくるロイ。  ……ちょ、ちょっとまって? あれ?  ロイの耳はさっきと違ってピンと立っている。  これはもしかして……??  「おれ、きっとヤバい病気なんだ……ああ、眠り姫も起きるって言うアレ……してもらったら元気でるかも……」  甘えた声を出しながら、口をもぐもぐさせる。  「ちょっとまって、ロイ!?」  「な……、いいだろ?」  ――これは、やっぱり仮病!?  ちょっと心配した私がバカだったわ!  私はロイの手を振り解いた。  「も~! ロイのバカ! 仮病だったのね!」  ――ゴン!  「……痛ててててててて! ちぇ、バレちゃったら仕方ないな」  ロイが頭を抱えてうずくまる。  「もう、本当に、すっごくすっごく心配したのに! 信じられない!」  「そんなに怒らなくてもいいだろ……。でもゴメン。やっぱりこう言うのは男からするべきだよな。……ん~~っ」  悪びれもせず、また飛びついてこようとするロイをひらりと避けて立ち上がった。  「いいっていうわけないでしょっ!!!! バカ、出て行って!!」  「ちぇ~、失敗したなぁ。わかったよー、また後でお願いしにくるぜ!」  ロイはまったく懲りない様子で笑顔を浮かべながら、部屋を出て行った。  その背中に私はため息をつく。  ……でも、あんな風に甘えたくなるときがロイにもあるのね。  いっつも直球で、キスさせろ! って言ってたのに、どこであんなワザを覚えてきたのかな。  ……甘えん坊のロイもちょっと可愛かったけどね。  私はロイの甘えた仕草を思い出して、つい、一人で微笑んでしまった。  お弁当は夕飯の残り物と卵焼きを焼いて……ごはんにはゆかりをかけようかな。  あ、美琴ちゃんに借りた雑誌を返さないと。あの雑誌に載ってたスカート可愛かったなあ。  そろそろ欲しかったCDが発売される頃よね。 学校帰りにお店に寄ろうかな。  部屋で一人、そんなとりとめのないことを考えていると、ドアがノックされた。  「おーい、いいか」  「ロイ? 何か用?」  「フロリアとユーゴのヤツ、俺を置いてどこかに出かけやがった! つまらねーよ」  仕方ないなあ。  「ちょっとだけだからね」  「わかってるよ。ったく、信用ねーな」
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