第1章

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 そういうと、ロイは遠慮なしに私のベッドの上に堂々と座った。  何をされるかわからないものね。  私はベッドからちょっと離れた椅子に腰かけ、ロイと向き合った。  「……あ……」  「どうしたの?」  「この部屋、微かにハルちゃんの匂いがする」  「おばあちゃんの……」  ロイにはわかるんだね、この部屋に残るおばあちゃんの匂いが。  私も、おばあちゃんの優しい匂いは大好きだった。お日様みたいに暖かくて、お花が咲いたみたいに柔らかくて甘い匂い……。  それを、ロイが覚えてくれているのは嬉しいけど、でも……。  3人がおばあちゃんの思い出話をする時ってすごく楽しそうで、それを見ていると、やっぱり私は代わりでしかないのかなって、淋しくなる。  「どうした? 元気ないみたいだけど」  「みんな、おばあちゃんが生きていたら、おばあちゃんの方がいいのよね……」  「!!」  「おばあちゃんが凄くステキな人だってことはわかってるし、仕方ないんだけど……」  仕方ない、と言いつつ、やりきれない淋しさに涙が零れそうになった。  こんなんじゃダメじゃない。これじゃ、本当は私が3人に好かれたがってるみたい、じゃない……。  「うわー、ちょっと待てよ!!」  「……」  「確かにな、俺たちにとってハルちゃんは誰よりも尊い存在だったぜ? でもな、それはお前だって一緒で……」  そこまで言いかけて、ロイはぐっと言葉を飲み込むと、困ったような、不思議そうな顔をした。  「……違う、んだよな。ハルちゃんとお前は、違うんだ」  「それは……そうよ。おばあちゃんの代わりになんて、なれないもの……」  「がーっ!! そういう意味じゃなくて!!」  「?」  「お前って、すげー近いんだよ。ハルちゃんのことは大好きだったし、笑顔を独り占めしたいとかは思ったこともあった。でも」  照れくさくそうに鼻をかき、ロイは続ける。  「ハルちゃんは、常に俺たちより上にいて、手が届かない……、ふわふわした存在だったんだけど」  「えっ……」  ロイは私の手をとって、頬ずりした。  「お前はいつも、ぎゅーっと抱きしめて、一日中独占したいって思うんだ。でも……我慢してる」  「……」  そんなロイの嬉しいような、くすぐったいような、そんな甘酸っぱい気持ちでいっぱいになったけれど……。
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