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そういうと、ロイは遠慮なしに私のベッドの上に堂々と座った。
何をされるかわからないものね。
私はベッドからちょっと離れた椅子に腰かけ、ロイと向き合った。
「……あ……」
「どうしたの?」
「この部屋、微かにハルちゃんの匂いがする」
「おばあちゃんの……」
ロイにはわかるんだね、この部屋に残るおばあちゃんの匂いが。
私も、おばあちゃんの優しい匂いは大好きだった。お日様みたいに暖かくて、お花が咲いたみたいに柔らかくて甘い匂い……。
それを、ロイが覚えてくれているのは嬉しいけど、でも……。
3人がおばあちゃんの思い出話をする時ってすごく楽しそうで、それを見ていると、やっぱり私は代わりでしかないのかなって、淋しくなる。
「どうした? 元気ないみたいだけど」
「みんな、おばあちゃんが生きていたら、おばあちゃんの方がいいのよね……」
「!!」
「おばあちゃんが凄くステキな人だってことはわかってるし、仕方ないんだけど……」
仕方ない、と言いつつ、やりきれない淋しさに涙が零れそうになった。
こんなんじゃダメじゃない。これじゃ、本当は私が3人に好かれたがってるみたい、じゃない……。
「うわー、ちょっと待てよ!!」
「……」
「確かにな、俺たちにとってハルちゃんは誰よりも尊い存在だったぜ? でもな、それはお前だって一緒で……」
そこまで言いかけて、ロイはぐっと言葉を飲み込むと、困ったような、不思議そうな顔をした。
「……違う、んだよな。ハルちゃんとお前は、違うんだ」
「それは……そうよ。おばあちゃんの代わりになんて、なれないもの……」
「がーっ!! そういう意味じゃなくて!!」
「?」
「お前って、すげー近いんだよ。ハルちゃんのことは大好きだったし、笑顔を独り占めしたいとかは思ったこともあった。でも」
照れくさくそうに鼻をかき、ロイは続ける。
「ハルちゃんは、常に俺たちより上にいて、手が届かない……、ふわふわした存在だったんだけど」
「えっ……」
ロイは私の手をとって、頬ずりした。
「お前はいつも、ぎゅーっと抱きしめて、一日中独占したいって思うんだ。でも……我慢してる」
「……」
そんなロイの嬉しいような、くすぐったいような、そんな甘酸っぱい気持ちでいっぱいになったけれど……。
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