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「もう、嘘ばっかり! そんなの信じられないもの」
ちょっとだけ意地を張って、手を戻した。
するとロイは、突然部屋の窓を開けると、ベランダに出て外に向かって大きな声で叫んだ。
「俺さ、お前のこと、すっげーかわいいって思ってる! 世界一好きって思ってる! 今すぐ抱きしめたいし、キスしてーよ!!」
「ちょっと、やだ! もう、何言ってるのよ!! ご近所に恥ずかしいよ」
「だって、ホントにそう思ってるんだから、いいじゃねぇか」
ロイが笑顔で、もう一度私の手をぎゅっと握る。
「よくない! それに、そんなことされたって、信じられないものは信じられないもの」
「じゃあ、お前が信じるって言うまで、ここで叫び続けるからな。俺は、お前のことが……」
「きゃー! わかった、わかったから!!」
ロイを部屋の中に引きずり込み、慌てて窓を閉める。
本当に何をしだすのかわからないんだから。
「かなた、お前、わかった言いながら、信じてねーな」
「……」
そりゃあ……。すぐに信じろって言うほうが無理、よね。
「……ま、俺は、俺が本当にかなたのことが好きだってこと、いつかは信じてもらえるって思ってるからさ!」
「……」
「いいか! もう一度言う、俺が好きなのは、ハルちゃんじゃなくて、お前だからな!!」
にこっと笑うと、ロイは柄にもなくウィンクを(しようとして両目を瞑ってしまったんだけど)して部屋を出て行った。
「おばあちゃんの……匂い」
おばあちゃんはとってもステキな人だったから、私が勝てるところなんてあるわけない……。
だけどちょっとだけ自惚れを許してもらえるなら。
ロイから貰える愛情の多さだけは、おばあちゃんに勝っているのかな、なんて思い、一人で頬を染めた。
今日は洗濯日和と朝から選択を始めて、やっと終わった。
窓を開けると、目がくらむような陽射し。
「よ~し、一気に干すわよ~! 今日もがんばれ私!」
誰に言うわけどもなく、声を上げて伸びをする。
ふと、視線を感じて屋根を見上げると。
「……へへっ」
日向ぼっこをする猫のように寝そべり、屋根からニヤニヤと笑っているロイが居た。
「やだ、ロイ! 居たの!? もう、見てないで降りてきて手伝いなさいよ!」
ロイがひらりと屋根から降りてきた。
「へへ、気合いいれてるお前もかわいいな」
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