第1章

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 「もう、嘘ばっかり! そんなの信じられないもの」  ちょっとだけ意地を張って、手を戻した。  するとロイは、突然部屋の窓を開けると、ベランダに出て外に向かって大きな声で叫んだ。  「俺さ、お前のこと、すっげーかわいいって思ってる! 世界一好きって思ってる! 今すぐ抱きしめたいし、キスしてーよ!!」  「ちょっと、やだ! もう、何言ってるのよ!! ご近所に恥ずかしいよ」  「だって、ホントにそう思ってるんだから、いいじゃねぇか」  ロイが笑顔で、もう一度私の手をぎゅっと握る。  「よくない! それに、そんなことされたって、信じられないものは信じられないもの」  「じゃあ、お前が信じるって言うまで、ここで叫び続けるからな。俺は、お前のことが……」  「きゃー! わかった、わかったから!!」  ロイを部屋の中に引きずり込み、慌てて窓を閉める。  本当に何をしだすのかわからないんだから。  「かなた、お前、わかった言いながら、信じてねーな」  「……」  そりゃあ……。すぐに信じろって言うほうが無理、よね。  「……ま、俺は、俺が本当にかなたのことが好きだってこと、いつかは信じてもらえるって思ってるからさ!」  「……」  「いいか! もう一度言う、俺が好きなのは、ハルちゃんじゃなくて、お前だからな!!」  にこっと笑うと、ロイは柄にもなくウィンクを(しようとして両目を瞑ってしまったんだけど)して部屋を出て行った。  「おばあちゃんの……匂い」  おばあちゃんはとってもステキな人だったから、私が勝てるところなんてあるわけない……。  だけどちょっとだけ自惚れを許してもらえるなら。  ロイから貰える愛情の多さだけは、おばあちゃんに勝っているのかな、なんて思い、一人で頬を染めた。  今日は洗濯日和と朝から選択を始めて、やっと終わった。  窓を開けると、目がくらむような陽射し。  「よ~し、一気に干すわよ~! 今日もがんばれ私!」  誰に言うわけどもなく、声を上げて伸びをする。  ふと、視線を感じて屋根を見上げると。  「……へへっ」  日向ぼっこをする猫のように寝そべり、屋根からニヤニヤと笑っているロイが居た。  「やだ、ロイ! 居たの!? もう、見てないで降りてきて手伝いなさいよ!」  ロイがひらりと屋根から降りてきた。  「へへ、気合いいれてるお前もかわいいな」
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