第2章

10/10
前へ
/10ページ
次へ
 濃紺の空に散りばめられた星が、氷のように冷たい輝きに見えて、涙が零れそうになったこともあったけど・・・・・・。  絶対に泣かないって決めていた。 だって、必ず帰ってくるって信じてたから。  「・・・・・・泣いてるのか?」  「ちょっと、だけ」  「どうして?」  「星の光があたたかく見えるのが、幸せで・・・・・・」  「はは、変な奴だな・・・・・・」  裏庭で私たちは、誰にも気がつかれようにこっそり、2人だけの小さな結婚式を挙げた。  2人きりで、星空の下で挙げたいといのは、お互いの希望だった。  「・・・・・・お前と・・・・・・これからは、ずっと一緒にいられるんだな」  私の左手を取り、そっと口付けたロイが呟く。  その唇が優しくて・・・・・・その言葉が嬉しくて・・・・・・震えるほどの幸せを感じた。  ロイはゆっくりと薬指をなぞり、少し残念そうに目を細めた。  「指輪も用意してやれなくて、ごめんな」  「いいよ、そんなの・・・・・・」  目に見えない確かなもので・・・・・・通じ合っている。もっと深い所で繋がっていることが、わかっているから・・・・・・。  そんな私たちに、指輪なんていう形・・・・・・そんな曖昧なつながりは、必要ない。  「お前の命が尽きる日まで、ずっと傍にいて、愛し続けるって、約束するから」  「うん・・・・・・信じてる」  「愛してる、ぜ・・・・・・」  ロイの口付けを待つためそっと目を閉じた瞬間・・・・・・。  夜の闇から零れ落ちた星の雫が、きらり、左の薬指に輪を描いたように見えた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加