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フロリアは手が痛くてかなわないとばかりにひらひらとさせる。
「・・・・・・あ・・・・・・お、俺・・・・・・」
ロイはまだ意識が混濁しているのか、呆然としている。
「もう大丈夫そう・・・・・・だな。今、解く」
ユーゴが手をかざすと、ロイに巻きついていた闇が手の中にしゅるしゅると戻っていった。
「ったく、このバカ犬! 一言相談しろ! 成獣化ことくらい」
フロリアが傍に寄ろうとすると、ロイはガバッと立ち上がって、私を見つめた。
「・・・・・・」
でも・・・・・・目線は私の顔ではなく、さっきから自らが絞めた首筋にあった。
「・・・・・・っ!!!」
ロイは涙を浮かべて、窓に向かって逃げるように飛び跳ねた。
「待ってロイ! 行かないで!!」
窓のところで、ロイがピタリと動きを止めた。
ユーゴもフロリアも私も、ただロイを見つめている。
「・・・・・・」
ロイは大きく息を吸うと、意を決したように、振り返らずに窓の外に飛び出していった。
「・・・・・・あのバカ」
フロリアがため息をつく。
「解くの早かったかな。ごめん、かなたさん」
ユーゴが申し訳なさなそうにうなだれる。
「・・・・・・ロイ」
窓の外から、悲しげな遠吠えが聞こえた。
「・・・・・・で、まだ帰ってこないわけだ」
「・・・・・・うん」
美琴ちゃんはスプーンでカフェラテの水面をくるくる回しながら、難しい顔をする。
「で、あんたはどうなの?」
「どうって?」
「いなくなったロイを諦めて、新しい恋でも始めるんですかってこと」
「そ、そんな! もう、いくら美琴ちゃんでも怒るからね!!」
「ま、あんたの性格じゃそうだろうね。でも、実際問題ロイはいなくなったわけでしょう?」
「・・・・・・まだ魔界に帰ったわけじゃないと思うの。近くにはいるはず・・・・・・だから探すわ、毎日」
「ふふっ、やっといつもの顔になってきた」
「え・・・・・・?」
「泣きそうな声で電話かけてきて、今にも死にそうな悲壮感バリバリの顔してたからさ」
美琴ちゃんは一気にカフェラテを飲み干して、ボウルを置いた。
「悲劇のヒロインになってばっかりで何もしないんだったら、ひっぱたいてやろうかと思ってたけど、心配なさそうだね」
「・・・・・・美琴ちゃん」
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