第2章

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 「うん、勿論。気をつけてね、ロイ」  「ロイはそっと私を抱きしめて、頬にキスをしてから囁いた。  「大好きだぜ、かなた」  その優しい声に涙が出そうになったり、今すぐにでも抱き返したくなったけれど、ぐっと堪えた。  泣いたら、ロイが行づらくなってしまうもの。  「私もロイが大好き。早く帰ってきてね!」  「おう!」  ロイは大きく空に向かってジャンプして、あっという間に夜の闇を駆け抜けていった。  ・・・・・・無事で、必ず帰ってきてね。  視線の端で、キラリ、流れ星が落ちた。  ・・・・・・あれから、数年が経った。  その間に、私の周りの人たちの環境は大きく変わり、それぞれの道へ進んでいった。  そんな中、私は未だロイを信じて待ち続け、この屋敷で暮らしている。  フロリアとユーゴは相変わらず元気で、たまに3人でロイの思い出話をしながら私を励ましてくれる。  私といえば・・・・・・、毎晩窓を開け、月に向かってロイにお休みをいうのが日課になっていた。  「今日も元気でいますように。大好きだよロイ。おやすみなさい」  祈るように大きな満月に挨拶を済まし、窓とカーテンを閉めたとき、窓の外で物音がした気がした。  けれど、私はまた猫にでもやってきたのかと思い、そのまま布団にもぐった。  「・・・・・・ちぇ、せっかく帰ってきたのに締め出しかよ?」  窓の外から久しぶりの・・・・・・でも聞きなれた懐かしい声がする。  私は飛び起きて、窓を開け放った。  静かに輝く満月を背に、月明かりに照らされたロイがそこに居た。  夢じゃない、少し精悍な顔つきになったけれど、紛れもなく、私の愛している人だ。  「ロイ!!」  「ただいま、かなた。待たせてごめんな!」  窓からするりと入ってきたロイは、私の感触を確かめるようにゆっくりと優しく抱きしめる。  「ロイ・・・・・・おかえりなさい・・・・・。逢いたかった、ずっと待ってたよ・・・・・・」  「俺もお前に逢いたかった・・・・・・連絡できなくてゴメンな」  優しく私の髪を撫でるその手がとても大きくて、ちょっとだけ戸惑う。  それだけ・・・・・・2人の間を時間が流れたのだ。  「帰ってくるって信じていたから・・・・・・」  だけど、そんなものはこうしてロイが帰ってきてくれたことで、一瞬にして消え去る。
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