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「さて」が言えない名探偵 (さん)
財布は見つけた。そして、ここからが問題。または真・解決編だ。
普通の探偵なら、聴衆を集めて犯人を見つけるなりトリックを論破するなりすれば、それでお仕舞い。
めでたしめでたしだ。
だが、これがコミュ障の場合だとそうはいかない。
聴衆を集めて~のあたりがまず無理。
それが出来たら、安楽椅子探偵よろしく教室で椅子に座ったまま推理をご披露していた。
そう。事件の解決よりも、解決したことをみんなに知らしめることが出来ない。
それがコミュ障探偵最大の弱点なのである。
「謎はすべと解けた!」が言えないのだ。
そんなかっこいいセリフ、コンビニで「お弁当温めてください」が言えないボクにはハードルが高すぎる。
また、解決できたことで見る目が変わって注目されることも嫌だ。それで誰かの嫉妬を買ったりしたらと思うとゾッとする。
かくのごとくコミュ障は、誰かから責められる事と同じくらい、褒められることも好まない。
そもそも注目されたくない。
別に、見直されたくもない。
波風立てず、平和に生きたい。
だったら財布なんか放っておけば良いのだけれど、目の前の問題があると、つい解きたくなってしまう。
それで困っているのだから自業自得で自縄自縛だ。
我がことながら難儀な性格である。
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