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彼女は誰かに話しかけられてもツンとして、クラスに馴染もうとはしていないことは、どんなに鈍いガキにでもわかる。その、他を寄せ付けようとしない無言の圧力も半端なかった。担任が指図することにだけは素直に反応しているけど、必要最低限の時しか発言もしない。こんな子はほかに知らない。
移動教室に行くとき、誰も彼女を誘おうとしないので、俺は緊張を唾と一緒にごくりと飲み込んでから、おそるおそる彼女に声をかけてみた。
「音楽室に案内するよ」
彼女は初めて俺をまっすぐと視て、表情が少しだけ崩れたように見えた。
「俺の名前、高島 冬夜っていうんだ」
彼女はこくんと頷いた。
「陶山さんの名前が、冬の名前だなぁって思って……」
「冬?」
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