第1章 出会い

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 彼女の初めて反応してくれて、鈴のような可愛い声を聴かせてくれて、俺は急にテンションが上がった。 「そう。とうやのとうは冬。やは夜って書くんだ」  俺はそう言いながら、教科書の名前を彼女に見せた。彼女はそれを見て、「ふうん」とだけ言った。  それから、どんな話題を触れても彼女の反応はなかった。  音楽室に着いてから、教室と同じ席順に座ることを教えてあげても、うんともすんとも言わずに淡々としている。  俺は自分の席に行くと、チャイムが鳴った。 「なぁ、おまえ。ああいう女がタイプなの?」と、前の席の花沢 (ゆう)が聞いてきた。  俺はすぐに答えられず、黙っていると、ゆうはチラチラと転校生を見て、「俺は無理だな……」とぼそっと言った。
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