第1章 出会い

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 給食当番が支度を進めるには、一か所に人が集まっているのはとても邪魔なことで俺は女子達に「とりあえず通れるようにしてくれ」と頼んだけど、それ以上のことは何もできなかった。  配膳をし始めた頃、やっと先生が着て転校生の前にいくと、目線を合わせるようにしゃがみこんで話しかけているのが見えた。とても静かで落ち着いた声で話しかけているのが、何か特別な理由でもあるかのように感じて。  不思議な気分で、その様子を遠巻きに見ていたら。 「陶山さん。驚いているんだろうけど、教室の中ではこうして班ごとに島を作って食事をするんだ。君の席だけは真正面に誰も座らないようにするから、ここに机を移動させても良いかい?」 「はい。……それなら」  彼女は、素直だった。その様子に呆気にとられるクラス委員と女子達。机を移動させて、座るとまたお人形のようにじっとしている。 「あの、先生?」  戸惑う子供たち相手に、先生は唇を一文字にして困ったような表情を浮かべていた。
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