2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
   ぎゅうぎゅうの満員電車の中、野中崎道夫は、窓を見つめた。  見馴れた夜の風景が、流れていく。  頑張って、朝から都心に出勤して、今は、ベッドタウンに帰るだけ。  道夫の心に、いつもの虚しさがただよう。  ・・・まったく、ベッドタウンとは、よく言ったものだ・・・  道夫は、一人苦笑した。  電車が、いつもの我が駅に着くと、  道夫は、我がベッドタウンに向け、歩き出した。  そして、数分も経たずに我が家の前にたどり着いた。  道夫の我が家は、5階立ての団地の2階にある。    2階なので、階段を使うが、さして、苦に思った事はない。  楽だと思った事もないが。  ドアを開け、中に入る。  そこは、殺風景な30前の独身男の部屋。  冷蔵庫やエアコンやテーブル等、必要最低限のものはあるが、  本当にそれだけだった。  道夫は、奥の部屋の開きっぱなしの鏡台とベッドをみつめる。  「・・・ベッドタウン・・・」  ほぼ寝る為の空間。  カプセルホテルとそれ程違いがなく思える。  たった1つを除けば。       
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!