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ぎゅうぎゅうの満員電車の中、野中崎道夫は、窓を見つめた。
見馴れた夜の風景が、流れていく。
頑張って、朝から都心に出勤して、今は、ベッドタウンに帰るだけ。
道夫の心に、いつもの虚しさがただよう。
・・・まったく、ベッドタウンとは、よく言ったものだ・・・
道夫は、一人苦笑した。
電車が、いつもの我が駅に着くと、
道夫は、我がベッドタウンに向け、歩き出した。
そして、数分も経たずに我が家の前にたどり着いた。
道夫の我が家は、5階立ての団地の2階にある。
2階なので、階段を使うが、さして、苦に思った事はない。
楽だと思った事もないが。
ドアを開け、中に入る。
そこは、殺風景な30前の独身男の部屋。
冷蔵庫やエアコンやテーブル等、必要最低限のものはあるが、
本当にそれだけだった。
道夫は、奥の部屋の開きっぱなしの鏡台とベッドをみつめる。
「・・・ベッドタウン・・・」
ほぼ寝る為の空間。
カプセルホテルとそれ程違いがなく思える。
たった1つを除けば。
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