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それから数日後の週明け月曜日、福祉施設内の朝礼があって、子供たちと職員が一堂に会していた。
その朝礼で、僕がアーチェリーの大会で優勝したことが話題として取り上げられて皆から祝福された。
「若林君、優勝おめでとう!」
職員の1人が発言すると福祉施設の子供たちも一緒に、
「ひろ君、おめでとう!」
と祝福してくれた。
その時、僕と同期の職員の『森山 美香』さんが、皆を代表して話を始めた。
「若林君、皆で話し合ったんだけど、若林君にはオリンピックを目指して、練習に専念してもらいたいと思っているの!」
皆の視線が僕に集まっていることを感じながら、僕は正直な気持ちを話した。
「それでは、皆に迷惑がかかると思うから申し訳ないよ!」
森山さんが、
「遠慮しなくていいよ!
職員の皆で協力して、若林君の仕事は分担して何とかするから大丈夫だよ!」
と話すと、職員の皆が笑顔で頷いていた。
すると、小学校1年生の『真央』ちゃんも話をしてくれた。
「真央もね、ひろ君がいない間は、できるだけ自分のことは自分でするようにするね!」
真央ちゃんは僕が担当する、下半身不随で車いすで生活している、いつも笑顔で元気な女の子だ。
僕は、真央ちゃんの言葉に心が揺らいだ。
皆の思いやりのある優しい笑顔を見て、僕は決心した。
「わかりました。
アーチェリーの練習に専念させていただきます。
オリンピックに出ることができるかどうかわからないけれど、自分なりに精一杯がんばります。」
すると、皆から暖かい拍手が沸き起こった。
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