金平糖の夢

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 お供えのお稲荷さんは、置いた日には無くなっているし、たまにちょっと変わったお礼もされる。  路地の奥から、木の上から、ちょっと止めて欲しいが背後からも、物言いたげな視線が向けられていることは知っている。それでもぼくは関わる気は無いし、それをわかっているから、向こうも返事のいらない言葉を一方的に送り付けてくるのだ。  向けられる、カタチの無いものに何も思わない訳ではないが。  「それでも、ぼくはもう関わらないって決めたんだ」  丁度手の中に転がり込んできた落ち葉を、ぼくはまたくしゃりと握り込んだ。 ***  数日後。  ぼくは砂浜に立っていた。  ザザァン、と響くような波の音が、耳に押し寄せてくる。  「────関わらないって決めたんだけどなー」  どうしてこうなったのか、と溜め息をつく。潮を含んで重たげな風が、ぼくの髪と浴衣を揺らした。  「何か言ったか?」  「……なんでもない」  横から飛んできた声に、ぶっきらぼうに返事をする。  ユタカ、と呼ぶと、夕闇の中で金色の虹彩が柔らかく瞬いた。  「なんでぼくなんだ」  「言っただろー? お前と来たかったんだ、って」  「生憎と、男にそんなことを言われてもときめかないぞ」  イケメンだとしてもだ。そんな趣味はない。  「そんなのじゃねーって」     
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