金平糖の夢

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 (神社まだか神社!!)  滅茶苦茶に路地を爆走しながらドップラー効果を繰り返す蝉の声は無視して、響く叫び声から妖怪との距離をはかる。  先程から縮まらない距離に、どうやら全力ダッシュなら、ぼくの方が速いらしいと少しだけ安心する。助かった。普通に考えて飛んでいるあっちの方が速そうだが、速度制限でもあるのだろうか。道路交通法のような。あるのなら感謝したい。  買い物をする前でよかったと思う。荷物があったら、何処かに放り捨てて逃げなければならなかったところだ。そんな勿体無い、後で拾えたとしても物と生産者に悪い。  角を曲がった視界に、鳥居の朱が飛び込んでくる。お邪魔します、と内心頭を下げながら、スピードを緩めることなく駆け込んだ。  「どぉこいったぁぁぁぁ!!!!」  さっきより大音量で聞こえる声に息を整えつつ振り返ると、鳥居の前で妖怪が吼えていた。  だいぶ前に聞いたことだが、そのお社の神様が嫌っていたり、悪い方向に傾いている妖怪は神社に入れないらしい。しかも中が全く見えないし聞こえないのだという。ぼくみたいな者にはありがたい避難場所だ。  だから。     
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