本編

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「その段階では自力で冒険者をできるようになっていたのだけど、その頃の私はよくわかっていなかったから」 「それで勇者探し……?」 「そうね。特にこれといって優れた能力があったわけじゃない私が、国王の目に留まるくらいに成長できるのだから、元の世界で探したほうが効率が良いと思ってね」 「てことは、簡単に帰れるのか?」 「私からすれば簡単だったけれど、あなたにとってどうかはわからないわ。もちろん、やり方は教えるけれど」  試しに聞いた呪文を唱え、用意してもらった魔法陣を元に魔法を使おうとしたが、当然ながらいきなり成功することはなかった。 「まあ、これをすぐに成功されても困るのだけどね。戻ってこられるかわからないのだから」  確かに今、元の世界に戻ってもここにまた来られる気はしない。そういう意味では失敗してよかった。 「あら、帰りたくないの?」 「向こうに居たって特に何かできるわけじゃなかったし、ここで根拠もないながら魔法使いとして期待されてる状況は、悪くないと思う」 「そう。ではまず、その根拠を作りましょうか」  アケミさんの指導のもと、俺の魔法使いとしての特訓が始まった。 「まずは……そうね。魔法と聞いてイメージするものは?」 「んー。水とか火とか、風とかを操るような?」 「じゃあ、やってみて?」 「え?」     
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