第49回 美人局(つつもたせ) 情報屋(ねたもと)

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 その矢先、江戸の裏社会を牛耳る大物が殺される事件が続発する。市中の香具師(やし)を押さえている大物が3人の手下とともに惨殺されるかと思えば、大泥棒の月天(がってん)の丁兵衛が襲われ、生死不明となる。さらに、スリの元締めが妾宅で襲撃され、愛人と下男下女、護衛を含む全員が殺戮(さつりく)された。  裏社会の大物ばかりが標的にされるのはなぜか。善人長屋の住人が思案投げ首でいるところへ、犯人の声明を載せた読売(瓦版)が売り出された。犯人は不敵にも「閻魔の僕(しもべ)、『閻魔組』」を名乗り、「江戸の悪党どもは、すべて閻魔組が始末する。首を洗って待っていろ」と宣言するのであった。  江戸庶民は「閻魔組」を喝采をもって迎えるが、儀右衛門が語る「どうせ人の善悪なんて、頼りないものさ」が骨身に徹している長屋の住人は首をかしげる。〝正義〟を唯一無二とし、悪党は切り捨てて当然と断じる「閻魔組」のやり口が我慢ならない。そして、彼らの行方を追うことになるのだった……。  何が善であり、何が悪なのかを考えさせる意図もあるのだろう。警察官が法で裁けぬ悪党どもを処刑する映画「ダーティーハリー2」を思わせる展開である。  この作品は、『善人長屋』シリーズの第2作であたり、現在、第3部にあたる『大川契り』までが刊行されている。 (新潮文庫、在庫あり。電子版あり)
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