第1章

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ある日、彼が顔を腫らして帰ってきました。頬に大きな絆創膏を張りつけて、目の回りが紫色になっています。 私と目が合った彼はカッコ悪いと思ったのか、ばつが悪そうに笑顔を投げかけて、大丈夫と元気なくはにかんでいました。詳しいことは話してくれませんでしたが、誰かと喧嘩をしたようです。顔の腫れが引くまでの数日間、彼は部屋に引きこもって寝ていました。とても心配で励ましたかったけれど、言葉は一切話せません。ただじっと見守ることしかできませんでした。 優しい言葉をかけ続けられているうちに、彼に特別な感情を抱くようになりました。でも彼が話しかけているのは私じゃなくシズナさんです。そう思う度に私の心は張り裂けます。
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