第4章

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第4章

       だいたい毎日、黄昏れる。          この症状を、十代のぼくは一生懸命人に説明した。わかってほしくて、一人くらい、わかるヤツがいるんじゃねぇかと思って。子どもの頃は言葉でうまく説明できなかったし、二十代の終わりの今は、もうわかってもらうことをあきらめてる。一番がんばったのは十代の頃。        その時のぼくは、こんな症状にいつも苛まれる自分に落ち込んでもいたし、なんとかしたいと思っていたし、それがどうやら自分にだけ訪れることを察して、嘆いてもいたし、ついでにこんな自分の人生やこの世を呪ってもいた。        介護を必要とする人や家族にやさしくない社会のように、何のフォローもないまま、ぼくの症状は放置されていた。どんなに人に話しても、誰もわからなかった。みんな話半分で聞いてた。笑ってた。やる気が失せたり、気持ちの上下なんてよくあることだと言った。みんな、誰でも、どの人でも、そんな気分になることはあって、それでも人は生きているんだからって。        放置されたぼくは、途方に暮れた。人に話せば話すほど、そのリアクションを見れば見るほど、おかしいのはぼくの方で、ぼくはただの、努力やがんばりが足りない、この世的に変わった人で済まされる。こんなに歴然と、明白にあるものなのに。この世は、多数決で負けるとロクなことにならない。        誰かが、それは病気かもしれないと言った。その話はなかなかに、ぼくをうれしくさせた。何かでそれが証明されたら、原因がわかったら、病名なんかがついたら、きっと納得できる。みんなにもわかってもらえる。ぼくは自分の人生を捨ててないぜ、どうでもいいなんて思ってないぜ、早くすっきりしたいんだぜ、生き生きと暮したいんだぜ、やる気だってちゃんとあるんだぜ。
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