第5章

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       そんな中で竹田さんは、体の調子は安定していても、よっぽど気が向いた時でないと参加したがらない。共同でやる何かにはあんまり興味がないみたいで、たいてい自分の世界の中にいて、きっぱりと独自の生活を送っている。そんな竹田さんの様子は生きる意欲を失っているようには全然見えなかったから、ぼくはなるべく邪魔しないようにしている。        ぼくが事務所に一旦行ってリビングに戻ってくると、竹田さんは、今度は涙声で訴える。       「おかあさんが、私にごはんをくれないの。お腹がすいたよ」 「あれ? 竹田さん、好きなものをいっぱい食べて、お腹いっぱいって言っていたじゃない」 「もらってない! お腹がすいた!」
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