第5章

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     だって、ぼくは知っている。自分のチャンネルを、世界を、感じたことをわかってもらえない苦労を。    それでぼくは、竹田さんの話をなるべく聞くことにしている。あんまり時間をかけると作業が滞るって怒られるから、できるだけ。 目を見て、聞いて、答えるだけだけど。 わからなくても真剣に聞いて、一緒にその世界をちょっとだけ見る。それだけ。 何も変わらない、何も解決しない、何も満足しないかもしれないことを、ずっとやってる。        動作はノロいし、機転は利かないし、仕事量だってそう多くはこなせないから、なんでもおばさん職員には負けて、あんまり優秀じゃないかもしれないけど。いや、仕事場では怒られてばっかり。ちゃんと仕事しなさいっていつも言われる。それでも、竹田さんはたまに笑う。ぼくを見て、なんとなく。  
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