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「星が爆発して砕け散ったら、宇宙の真っ暗闇になる。でもそれは、無ではないの」
「へ?」
「超新星は爆発して自分を一回終わらせるけれど、とても、とても細かい、その粉々になったものを宇宙に浮かばせる。そのくらい細かかったら、離れて見れば、それは濁りではなくてちゃんと透明に見える。美しい黒。ただそれだけの黒。いい? 斉藤くん。黒は、遠くから見たら透明で、近くで見たらたくさんのものが浮かんでいる。星の子どもが浮かんでいるの」
「へーなんかすげぇ話。おもしろい」
「でしょう? それがまた少しずつ集まって、今度は新しい星を作るのよ」
「へぇ」
「闇だからといって、すべてが終わっているわけじゃない。汚くもない。そこには同時にたくさんのものが生まれていて、また新たに星が作られる。次に続くものなのよ。だからね、爆発することも、宇宙の黒も、ちっとも怖いものじゃないの」
竹田さんはそう、自分に言い聞かせるようつぶやいて、何度も頷いた。
それから唐突に、きっぱりとした言葉を発する。
「はい、それでは、教科書の二十五ページを開いて」
それが一つの物語の終わりのように、それきりまた意識が霧散していった竹田さんは、ふぅと息を吐いて、別の次元の人になってまた歩き出した。
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