第6章

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       ぼくは竹田さんの話を頭で考えようとしたけど、まず地球が爆発してすべてが吹っ飛んで、息ができなくなって自分が終わってしまうことを思ってしまって、なんだか柄にもなく苦しくなって、竹田さんのように晴れやかにはなれなかった。        ただ黒を、真っ黒を自分の目がスキャンしてよくよく目をこらすと、だんだんとそれが近づいて、真只中に入って行って、黒が霧みたいになって、ぼくの目がそれを通り抜けて、浮かんでいるおびただしい数の星の欠片が見えて・・・・・。        サワサワサワサワ・・・・・。        ああ、まただ。  こんな時に、黄昏れが・・・・。        今、一瞬黒が黒でなくなった気がしたのに、何かわかった気がしたのに。        あっというまにそれは消されて、再びイヤな黒が、怖い闇が、ありありとした密度と立体感で重々しくぼくの頭上にかぶさって来る。目の前の景色にどんよりとした黒のフィールターがかかる。    ぼくは動けなくなって、言葉も発せずにいる。        心臓がどこかに持って行かれそうだ。体の自由を奪われて、力が入らなくなった歯で噛みしめようと心だけもがいてる。落ちる前に、何かにつかまらないと。でも、指がマヒして空気が素通りする。ぼくは宙に浮きそうになる。ああ、いやだ、やだ、やだ!         竹田さんはぼくのことなどまったく眼中になく、背の低い木に茂った葉っぱを触っていた。  
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