第3章

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第3章

       それはそれとして。        そんな時でも、黄昏れは来る。  この黄昏れは仕事に支障を来たす。ハードだって言ってんのに。仕事中だぜ。一生懸命やってるんだぜ。忘れていたぜ。それでも、あれは来る。  佐々木さんの口にスプーンでおかゆを運んでいる時にだって、あれは来る。ちょっと窓から外を見たばっかりに。  その日は強風注意報が出ていて、暗い空の下、庭の木の葉がバフバフと揺れてた。        施設の中はあたたかくて、窓から見る外の絵図とは大ちがいの、ゆっくり、まったりとした空間だった。  施設には時計がない。利用者さんの中には、作業や行動するのに時計を見ると、パニックになって暴れ出す人もいるから。おぼつかない手足を、脳を、一生懸命奮い立たせようとする時に、邪魔なんだ。        誰だって、時間に追われたくはない。計られたらプレッシャーにだってなる。だから、時計はいらないとぼくも思う。時間で動く一日の流れやカリキュラムは、スタッフが把握している。だからぼくらスタッフは、全員腕時計をしている。
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