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シローは近くの手ごろな大きさの岩の上に腰を下ろした。その拍子に、どさ、と鞄が砂の上に落ちて、もうそのまま化石になってしまいそうなほど重く沈む。こんなに何を入れたのだったか。合宿に行く為に慌てて詰めた荷物そのままだ。
どうしてこんなところにいるのだろう。シローはため息を吐くように思う。
「古寺さん、泣いてました。たぶんだけど。……だから、おあいことかそんな感じ」
『…………』
「あの人さ、たつみさんの親友で、幼馴染なんすよね。仲良いなと思って見てたんで、そうだって言われてすげー納得しました」
たつみは黙って聞いている。あまり黙らないでほしい、とシローは思った。
自分はそんなに口が回る方ではないのだ。たつみが何かけしかけてきたり質問してきたり、なんでもいい、何か言ってくれないとすぐに言葉が詰まってしまう。
けれどたつみは黙って次の言葉を待っていた。何か喋らなくてはとシローはぎこちなく口を動かす。
「古寺さんに言われたこと、俺なりに色々考えたりしてたんすけど、なんかもう……それは違うとか、それは合ってるとか、いろんなこと思ったんだけど、よくわかんなくて」
うん、とたつみに頷かれると、カッと顔の上の方が熱くなった。
みるみる内に水に潜ったみたいに視界が潤んで、前を向いていられなくなる。シローはぐっと耐えて一度下を向き鼻をすすった。
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