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「いろんな考えの人がいるの、わかってたつもりです。そりゃ、受け入れられない人もいるって」
『うん』
「でもそんな次元じゃなくて、俺、ほんとはたつみさんが否定されたことに、怒らないとなのに、俺」
『うん』
「自分が、ホモだって言われて、たつみさんがホモなままなのも俺のせいだって言われて、何も言い返せなくて」
『……うん』
「それ聞いてた店中の人みんなが、すごい顔してこっちを見てんのわかって、それが、すげえ怖くて」
『…………』
「っ、も、もしかしたら、古寺さんの、言うとおりなのかもしんねーとか、思えてきて、俺」
俺はもうたつみさんに会わない方が、とそこまで言ってシローは言葉に詰まった。
たつみは何か考えているのか、それともシローの言葉の続きを待っているのか、やはり黙ったままだった。
何も言えないまま鼻をすすり、息を整える。電話の向こうにたつみがいるということが、たまらなく肌を粟立たせた。
「……たつみさん、」
『うん?』
「会いたい、です」
蚊の鳴くような声だった。けれどたつみはそれをはっきりと聞きとって、「わかった」と明瞭な返事をする。シローは溢れ出してくる涙を抑えられずにその場で膝を抱えた。
「っ……」
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