13.きみのいる場所

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 あれだけ泣いておきながら、まだ泣くつもりなのか。自身を叱咤するように思ったけれど、涙は構わずシローに泣けと迫ってきた。 「……すいません」  自分でもわかるぐらいに声が震える。  触れているたつみの肌が熱くて、たつみの匂いが潮の匂いよりもずっと近くて、それが全部たまらなかった。  どうしていいかわからずふらつく手が、やがてたつみのシャツの裾を捉える。  するとたつみの手は、まるで赤ん坊をあやすみたいにゆっくりとシローの後頭部を撫でた。 「うん、もうしないで」  シローは幾度かまばたきをして、ギリギリ涙が落ちないことを確認すると、少し動いて顔を上げた。たつみはそれに応じて身体を少し離す。 「たつみさん、古寺さんのこと好きだったんすよね」 「……そうだよ」  たつみは微笑んで答えた。  いまもか、とはどこか怖くて尋ねられず、シローはぐっとたつみの身体を押し返す。たつみの手のひらは少し名残惜しそうに肌の上を滑ったが、シローが離れようとするのを引き止めはしなかった。  シローは、たつみとの間に吹き入ってきた風の涼しさに誘われて足を動かす。考えもなしに海の方へと歩いてみると、しゃり、しゃり、と砂が鳴った。  あいつさ、とたつみが座ったまま背後で口を開く。     
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