3.二十一時の霹靂

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 この先自分が大学生になったら、こんな風に髪を染めたり、スケジュール帳を色とりどりにしてみたり、そんな風になるのだろうか。なんだか想像がつかなくて、思わず顔がほころんだ。  「開和高行く」とお世辞にも綺麗とは言えない字で書かれたその予定の色は、一番目立つ赤色だ。たつみは楽しみだと鼻歌をうたいながらスケジュール帳をバッグへしまう。 「……陣さんって、高澤先生とそんな仲良かったんですか?」  ふと気が緩んだはずみでシローは尋ねた。「詮索はしない」とリンと言い合っていたことを思い出し、すぐにアッとしたが、たつみは特に気にする様子もなくさらりと答える。 「んー、仲良いって言うか、おれが一方的に相談持ち掛けてただけかな。でもあのころは、言えるのも聞いてくれるのも先生ぐらいだったしさ。実際おれが親に自分がゲイだって言えたのも先生のおかげみたいなもんなんだよ」  本当世話になったんだ、とたつみはしみじみと懐かしむように言った――が、 「………………、はあ」  リアクションらしいリアクションもとれず、シローは遅めの相槌を打つことしかできなかった。まばたきの回数が増えた視界の真ん中で、たつみが困ったように笑っていた。  たつみはおもむろに机の上に置かれたグラスを手にとってごくりと水を飲んだ。シローの視線は何気なくその手を追う。たったの一口で水が一気に減っていた。     
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