4.息を吸って吐く時間

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「ただのクラスメイトです。リンって呼んでください。シローから先輩のことうかがって、私もお会いしてみたいなーって思ってたんです」 「はは、そんな大した者じゃないけどね。陣たつみです、よろしく」  差し出された手をリンは快くとって握手を交わした。  その間になんとか笑いを引っ込めて、シローはリンと共にたつみを来客用の受付へと案内をする。名簿に名前を書いている間も、受け取った「来客」のプレートをつけるときも、たつみはそわそわと嬉しそうにはにかんでいた。  えーっと、と手続きを終えたたつみを見てリンが声を上げる。 「ねえシロー、案内するの職員室でいいんだよね?」 「じゃないのか? それか先に先生に確認して……」 「オッケー任せなさい。確認してくるから、ここでちょっと待ってて」  シローが頼もうとするよりも早く、リンはてきぱきと決断するとあっという間に職員室の方へと向かって行った。わかりやすいというか、本当にちゃっかりしているおだんご頭だ。  思わず玄関ホールで置いてけぼりを食らう形になってしまって、シローはたつみにすみませんと謝った。たつみはおかしそうに笑っている。 「や、別にいいよ。リンちゃんだっけ、かわいい子じゃん」 「どこがっすか……」  シローが顔をげんなりさせながら言うと、たつみはけらけら笑って玄関ホールの壁に背を預けた。     
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